(株)アネ゙デパミ゙のブログ

くだらないことをさらにくだらなく

【怪談】食事【その1】

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鯉です(挨拶)

 

こんにちは。アネ゙デパミ゙です。

 

 

【駄菓子屋の老夫婦】

駄菓子屋というのは魅力的なもので、あそこは子供の小さな夢が大きくなって出来ている場所と言って違いありません。コンビニエンスストアが道を挟んでまで居座っている現代では絶滅危惧種と言って良いものかもしれませんが、それ以前はお菓子やおもちゃを買ったりするのは駄菓子屋でした。

 

私が少年の時はまだ奇跡的に駄菓子屋が残っていました。

今では滅多に見ることのなくなった、あの古き良き駄菓子屋です。

その駄菓子屋はお寺の前にありました。

 

そのお寺は、裏手の敷地が公園になっており、私が子供だったということもありますが、とても大きなものだったように記憶しています。公園といっても、ブランコや滑り台があるという類のものではなく、ご近所の方々の散歩コースになっているような、自然公園に近いものでした。私もよくそこで日が暮れるまで遊んだものです。

 

駄菓子屋に話を戻しましょう。

 

その駄菓子屋はご老人夫婦と手伝いの息子さんでやっている小さなものでした。

私は小学生の頃は小遣いというものを殆ど頂いておらず、周りの子も、時代がそうだったのかもしれませんが、お金など全く持っていませんでした。

本来、私たちなど彼らにとっては商売相手などでは到底なかったでしょう。

しかしながら、ご夫婦と息子さんは、お金を持っていない私たちに沢山のお話をしてくださったのです。

 

話と言っても、世間話はあまり聞いたことがありません。

話は、近くにお寺さんがありましたので、怪談が主でした。

その内容は、時に恐ろしく、また時に心温まり、そして時に教訓めいていました。

 

私たちはご夫婦と息子さんのお話が大好きで、私は今でも怪談をはじめとした怖い話が大好きです。残念なことに、今はその駄菓子屋は無くなってしまっているのですが、これから、そのお話の中のいくつかや、私が友人や親戚から仕入れたお話をご紹介させていただければなと思います。

 

随分と昔のことですから、記憶が薄れているところを補填したり、また、プライバシーにかかわる部分を多少改変しておりますこと、先に申し上げておきます。

また、私の拙い文で本来の魅力を伝えきれない部分がございますこと、先にお詫び申し上げておきます。

 

本当の本当に怖いものはもう少し文章を書くことに慣れてから。まずは池のお話し。

 

【食事】

そのお寺には大きな池がある。自然にできたこの池はところどころ深いところがあるらしく、手すり付きの橋がかかった遊歩道以外は歩かないようにと、僕たちは周りの大人から言い聞かせられていた。特に、庭園張りの柵の無い石橋は絶対歩かぬようにと言われていた。

 

「何で石橋歩いちゃいけないか、知ってる?」

息子さんはそう聞いてから話し始めた。

 

そのお寺の池には沢山の鯉が泳いでいるのだが、その鯉の中に一匹、人面魚が紛れているといううわさが立ったことがあるそうだ。

 

その人面魚というのが、最初は夕の暮れまで公園を闊歩していた悪戯小僧が見たというもんだから、はじめのうちは、どうせまた餓鬼の悪い癖だ、と相手にされなかった。

駄菓子少年も周りと同様、全く信用していなかったのだが、当時の学校の友人が同じことを言い始めたものだから驚いた。なぜなら、彼は学校では室長をしており大層真面目な性格、滅多に冗談を言うようなやつではなかったからだ。

 

そこからは学校はその話で持ちきりとなった。すると嘘か誠か、やれそいつは人間の言葉を話せるだの、実は人食いで、言葉はその食った人間の知性を得ているだの、魚だけに尾ひれがどんどんとついていった。

当の駄菓子少年は好奇心が強い方で、また、何事も自分で確かめずにはいられない質だったため、噂の真偽を確かめるための機会を伺っていた。幸いお寺は自分の家の目と鼻の先であったため、当時は勤め人であったお父様が出張で不在の夜、少年たちは作戦を決行した。

 

こういうのは丑三つ時にやるものだと相場が決まっている。少年たちは定刻までに各々懐中電灯と捕獲用の網を用意して神社裏の公園の入り口に集合した。駄菓子屋の家に泊まる、と言ってあるそうだ。駄菓子屋少年の家には魚用の網などなかったので、実家で祖父が営んでいる駄菓子屋からお菓子を少々ちょろまかしてきた。

 

私もそうだったからわかるのだが、少年というものは後先考えずに行動する習性がある。はじめのうちこそ元気に人面魚探しをしていた彼らも、一時間もすれば最初の勢いはどこへやら、駄菓子少年が持ってきたお菓子を楽しみながらのおしゃべり会に様変わりしてしまったのだ。

 

元々、こういった類の話は皆が皆信じている訳では無い。探索に飽き、話にも空き始めたころ、夏の朝は徐々に白み始めていた。夏といっても夜明け前は少し冷える。誰が帰ろうといった訳では無い。しかし、夜更かしにつかれた少年たちは一人、また一人と帰っていった。

 

駄菓子少年も大きく欠伸をした後に、のそのそ公園の出口に向かって歩き始めた。

 

ぽちゃん

 

池で音がした気がした。

 

鯉が跳ねたのだろう。そう思いながらも何となく駄菓子少年は池の方へ近づく。そしておもむろに池を覗いてみると水面を綺麗な見事な錦鯉が這うように泳いでいた。

なあんだ、やっぱりただの鯉か。期待と何か別の感情をふうと吐き出し、駄菓子少年は踵を返そうとすると後ろから声がした。

 

「おい」

 

誰もいない。だが確かに声がした。

 

「おい、お前。そこのお前だよ。」

 

声のした方向を見てみると、池の真ん中あたりに小さな顔が覗いていた。奇妙な姿であった。胴は黒の斑のある立派な鯉であったが、本来お頭があるはずの場所はえぐられたようで、顔は丁度人間の赤子のようだった。

 

ぐうっと胃の辺りから嫌な感じが込み上げていたが、不思議と怖くは無かった。昨日から一睡もしていなかったのか、はたまた好奇心の方が勝っていたからか、少しも恐怖心を抱かなかったのだ。

 

「僕…?」恐る恐る聞き返す。

「そう、そうだよ。お前だよ。」それは答えた。

「君、喋られるの…?」続けて聞く。

「まあな。それよりちょっとこっちに来ないかい。俺に興味があるんだろう?お喋りしようよ。」

 

駄菓子少年は行ってもよいのかという疑念といきなり飛び込んできた好奇心にしばし揺らいだが、まるで引き寄せられるかのように池の淵まで歩み寄る。

 

「いや、そっちじゃなくてさ。あの橋のところまでおいでよ。そっちは浅くて窮屈なのさ。」

 

よろよろと石橋に向かう。

 

「ほら、一緒に喋ろうよ。退屈なんだ。」

 

近くで見ると本当に赤子の顔のようだった。駄菓子少年は魅入られたかのようにその光の無い目を見つめ続けていた。

 

「ほうら、もっとこっちに来てさ。」

 

それとの距離が近くなる。段々と。近く。胃の上が熱くなってきたがどうだっていい。距離が。なって。近く…

 

「何をしとるかー!!そこを離れなさい!!」

 

いきなり強い力で首筋と腕をぐいと引っ張られ、池の脇の地面にたたきつけられた。よく見た顔だ。この寺の住職であった。不意に強い吐き気が襲ってきて胃液が出るまで嘔吐し続けた。

後で聞いた話だが、いつものように寺廻の掃除をしようとしたところ、駄菓子少年が池に向かってよろよろと歩いている。散歩でもしているのかと思ってたが、石橋の上から身投げでもするかのように歩を進め始めたため、慌てて捕まえに行ったのだという。

 

「どうしたの一体。」背中を優しく擦りながら住職が問いかける。

「とりあえず中でお茶でも飲んでいきなさい。」

 

立てる?との問いに震えながら小さくはい、と返事をしたところで駄菓子少年は背後からの声を確かに聴いた。

 

 

「ちぇっ。あと少しだったのに。」